「あきろまん」ブランドを北広島町から全国へ
広島県のオリジナル品種として1994年に誕生した「あきろまん」。県北部を中心に栽培されていますが、もっとも多い生産量を誇るのが山県郡北広島町です。中でも、同町の石井谷(いしいだに)地区に拠点を置く「農事組合法人 東山(ひがしやま)」では、堆肥・有機質肥料などを用いた「土作り」にいち早く着手し、お米の品質向上に尽力。自主販売などにもこだわり、自慢のお米を全国のファンに届けています。同法人を訪問し、米栽培にかける情熱や「あきろまん」の魅力について聞きました。
生産者プロフィール
農事組合法人 東山
代表理事 谷口 武雄さん
1947年、北広島町の農家の3代目として生まれる。地元の郵便局に40年勤めた後、専業農家として就農。平成30年2月18日に「農事組合法人 東山」3代目代表理事に就任。約60人の組合員とともに、「あきろまん」をはじめとした特別栽培米、白ネギ、ミニトマト栽培などに従事している。
栽培しやすく収量も多い「あきろまん」
「農事組合法人 東山」の設立は2003年で、当時は「あきろまん」よりもコシヒカリの方を多く作っていました。ただ、コシヒカリは倒伏しやすくて、早生なので刈り取りも台風が多い9月の初め。栽培に何かと手間がかかるんですよ。その点、「あきろまん」は広範囲で元気に育つし、刈り始めは天候に左右されない10月上旬。作りやすくて収量も多いので、数年で作付面積の割合が逆転しました。
当法人「東山」は、栽培や保管方法にもこだわりがありましてね。お米は全て、堆肥や有機質肥料を使って減農薬で栽培する「特別栽培米」だし、品質劣化を抑えるために保管も低温で丁寧に行っています。
米作りに必要なのは自然の恵みと農家の情熱
米作りはおもしろいもので、品種は同じでも育てる土地の気候、土、水などで味に違いが出てきます。山間部に位置する北広島町は、空気や水がきれいで、米のうまさを引き出す昼夜の寒暖差もある。でも、これら以上に大事なのが作り手の情熱ですよ。朝昼晩とあぜ道を歩いて、虫がついていないか、モグラが掘った穴から水が漏れてないかなどを、こまめに確認するんです。
一年でもっとも大変なのは、4月の田植えが済んでからの2か月。苗の成長具合を見ながら水の量を調節して、雑草にも気を遣う。手間がかかるけど、だからこそ収穫した時の新米の味は違いますね。「あきろまん」は、ある程度低温で保存して、精米後すぐに炊いて白ご飯で食べるのが一番。米本来のうまみを堪能できます。
お客さんの声を励みに「広島の米」を広めていきたい
当法人は、JAへの出荷も含め、自分たちで販売も行っていましてね。もともとは、組合員が新米を親戚や知人に送っていたのが始まり。そこから「このお米はおいしい」と評判になって、紹介のさらに紹介で注文が増えていきました。今では中四国や九州を中心に、多くのお客さんから注文をいただいています。嬉しいことに、米どころ新潟にもファンがおられます。
「玄米で炊いたら米が立って、味がひときわ違う」という手紙をもらうことがあれば、時には耳が痛い話もあります。でも、消費者の声が直に届くというのは、何であれ私たちにとって喜ばしいことです。もっと食味を上げて「この「あきろまん」はどこのお米?」と、全国から注目してもらえるような米作りを続けていきたいですね。